「ガーベラはね、大島で作っている花なんですよ。茎の痛みが早いから、最初からお皿に生けてみたんです」。
この宿、ペンションみなもとのいたるところに花が生けてある。「生の花が有るとほっとしますってお客様がおっしゃるので、生けるようにしたんですけどね。私、素人だからお客様のおっしゃることをひとつひとつ取り入れさせていただいてね」と元町港に一番近い宿の女将さんがいう。

玄関にも、カウンターにも、食卓にも、階段にも、客室にも。
女性に人気の宿かと思ったら「そう思われるでしょ。以外とネクタイを締めた男の方が多いんですよ。コンピュータとか学術なんですかね、みなさんゆっくり寛がれています」。大半が常連さんと常連さんのご紹介で埋まってしまうという。「観光のご案内もするんですけど、結構、部屋でゆっくり休まれて、いつもより沢山寝たあっておっしゃるかたも多いですよ」。冬だから大丈夫だろうと思っていたら、カメリアマラソンと重なって、たまたまキャンセルがあったために部屋が取れた。満室だ。隣で夕食をとっていた女性客は何度もこの宿にとまっていて「マラソンでて見ようか」ということになって「また来ちゃった」と。


夕食の品数が多い。

島海苔のピザ。
香ばしい。生地の仕込み、醗酵から考えると一日中厨房で仕込みをしているのではないかと訊けば、まったく苦にする様子もなく「そうですね。ずっとお料理しているかもしれませんね」という。このピザ、最初は近所にあったピザ屋さんが店をたたんでしまったのがきっかけなのだと。家族が食べたいというので、生地作りから始めて、東京に出向いたときにチーズをいろいろ買ってみて、試行錯誤。島海苔と島の青唐辛子を合わせて香ばしく焼き上げた。だんだん味が定まってきて家族が喜ぶ。「これなら、お客様にお出し出来るわね」となってから、チーズの卸屋さんと取引を始めた。さらに勉強し、今は6種類のチーズを合えた食感と味に定まった。ふわっと焼き上がった生地は逆に専門店にはない贅沢さを覚える。

「たいした珍しい材料ではないので、手間ぐらいは一所懸命かけないとね」という。なんだろう「効率」とは対極の時間をたくさんかけた料理だ。

島でとれた真鯛の鎌の煮付け。明日葉と島の大根が添えてある。「お食べになられます?ああ、よかったあ。たまに苦手なかたがいらしゃるのでうれしいです。明日葉は魚に合いますので味わってみてください」。掌に余るほどの大きさだ。


里芋の素揚げ。香ばしく挙っていて砂糖をまぶしたかともうほど甘い。ふわっとした食感で、ムースとかなにか練り物のようだ。「みなさんそうおっしゃるんですけど、素揚げなんですよ」と笑顔。島の青唐辛子を練り込んだ甘味噌で食べる。出たばかりの蕗の塔、ベーコンでまいた榎、トマト。一つ一つ違う旨味。

 

明日葉の茎のサラダ。「へー、茎もこんな風にして食べられるんですね」セリのような香りと甘み。

 

絹さやの炒め物。
「大島の特産なんですよ。最近は農家も減ったんですけど、昔は沢山作っていましてね。収穫期の農家は、選別が大変で家中絹さやで埋まってしまってましたね」。大島の斜面、火山灰の土壌は水はけがよく、豆科の病気がでないので良質の絹さやができるんだとか。生産量は減っても人気の作物だ。歯ごたえ、甘み、苦み。後を引く。

 

蒸し物。豆腐の上に中華まんじゅうの餡のような、野菜の食感と肉の旨味の強い具が乗っている。下に敷いてある椎茸は大島産。肉厚で歯ごたえがいい。

 

サビという時魚のつみれを揚げたものと握り。カンパチなどの魚を生と鼈甲が交互に三種類。生と鼈甲の味を比べられて楽しい。鼈甲は島料理で、青唐辛子と醤油に漬込んだもの。走りのエシャロットが同じ盆に盛られていた。鯛のあら汁がつく。

隣の女性達は「これ、おかず一つで、一晩のご飯ね。私のうちだと何日分になるかしら」と笑っている。大食漢の僕もやっとの思いでたべた。「おかわりする方があると、足りないかしらん、もう少し付けようかしらって。あれも食べてもらいたい、これも食べてもらいたいと思っているうちについついお料理がふえちゃって」と女将さんが笑う。

 

朝食もすごい。女将さんはいつ寝てるんだろう。

入れてくれたお茶が旨い。みんななにげに飲んでいたけど、声をあげたら笑いながら「美味しいですか?いえ、高いお茶じゃないんですよ。節約でね三種類ブレンドしてみたの」と。香りと甘みで目が覚めた。

 

朝食を平らげるにも1時間近くかかった。鯛のみりん干し、明日葉の茎のお浸し、沢山の野菜の巣ごもり、大根の葉の炒め物、鯛の〆もの。

島の大根、里芋たっぷりの味噌汁に明日葉餅が入っている。昼はいらないと思いながら繊維がたっぷりなのでちゃんと消化してお腹はスッキリだ。

 

「10時迄居てくださっていいんですよ。でも、私、孫の応援にいかないとだから失礼しますね」と僕を置いて女将さんがカメリアマラソンを見に出かけて行く。椿まつり、カメリアマラソン、冬の大島もお客が絶えない。マラソンは島人も沢山参加する。夜祭りでも子どもから大人まで、スーパーあんこ娘や和太鼓で島の人々が盛り上げている。
「すぐ近くの船着き場でやっているから、夜祭りも見てね」女将がいう。

 

TEL:04992-2-1002
http://www17.plala.or.jp/minamoto1002/(外部サイト)

交通


元町港より徒歩2分

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